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学校で習ったような、単純なものではないんだわ。(あいか)


文中の根拠から“論理的に”解き明かすと、作家の本意が透けて見えてきた。
今までの常識を覆す衝撃の発見とは――。

第一章 夏目漱石「こころ」1より


出 口:さて、『こころ』の謎だけど、先生はどうして自殺したのだと思う?
あいか:若いとき親友のKを裏切ってお嬢さんと結婚した。そのため、Kが自殺しちゃったものだから、先生は良心の呵責に耐えかねて――。
出 口:本当に、そう?

あいか役の視点が解き明かすきっかけになった“地獄変”


女子高生“あいか”には、実はモデルとなる女性が存在します。鋭い感性を持つその女性との徹底的な話し合いを経て完成されたこの作品は、
いわば共作と言えるのかもしれません。彼女から次々と飛び出す鋭い指摘に、出口先生が驚きまじりの感嘆の声を上げていたことを思い出します。
そのあいか役のモデル、都内の会社に勤務するEさんに、制作当時の裏話を伺ってきました。


Q : 先生とはどんな形で対談していたのですか?
A :

読んでいて、気になる、引っかかる個所を率直にお話ししていきました。
例えば、「地獄変」では娘が襲われたシーンが気になりました。私が女性だからでしょうか、あのシーンは印象的で、
「あの逃げていった相手は誰だろう?」というのが一番の疑問でした。
はじめ先生は、「大殿様だよ」と言っていましたが、私は良秀が犯人のような気がして、どうも納得がいかなかったのです。

Q : 女の第六感ですね。
A :

深読み好きなだけかもしれません(笑)。ただ、大殿様が相手だったら、何も慌てて逃げていくことなどない、そんな単純な疑問でした。
それに、その後の娘の行動、語り手の対応……違和感だらけでした。ただ、その根拠は見つけられなかったのです。

Q : その疑問に出口先生はどう答えたのですか?
A : 次にお会いした時に、「読み返したら、言われたとおりだと思った」とおっしゃって、襲ったのが良秀だという根拠をたくさん見つけてきてくだいました。
Q : あの頃、出口先生は「あいか役の人から、ものすごい指摘を受けたんだよ」と驚嘆の声をもらしていましたよ。
A : 小さな疑問は、芥川の地獄の世界を、さらに地獄の世界へと導いていきました。
芸術至上主義の作品から、人間のより奥底にある地獄を描く世界へと、すっかり「地獄変」の印象が変わってしまいました。
Q : 出口先生との共同作業を経て、文学作品に対する見方は変わりましたか?
A :

変わりました!!
芥川や漱石は、遠い遠いまさに「教科書の世界の人」のように思っていましたが、作品を理解していくことで、身近に感じられるようになりました。
自分勝手に読むのではなく、理解しながら読んでいくこと、また文学を理解する為には、時代背景を意識することも必要だということも学びました。
現代の価値観では理解出来ないことも、時代背景を知ることでわかるようになってきます。また逆に文学を通して、明治時代から日本がどのように
変わってきたのかを知ることもできるようになり、楽しさが何倍にも増えました。

Q : 「文中から根拠を探す。論理的に読む」という出口先生のスタイルは、冷たい印象を一見与えがちですが、いかがですか。
A :

確かに論理という言葉は硬くて冷たい感じがしますね。でも私は、「論理=相手を思いやる気持ち」だと考えているのです。

Q : はじめて聞く考えです。詳しく教えてください。
A :

論理の始まりは「他者意識」だと出口先生の授業で教わりました。「自分と他人は違うんだ、だから人をわかろうとする時には、他者意識=論理が必要なんだ」と。
他人を理解し、うまくコミュニケーションを取るためには、常に他者意識が必要です。皆が、自分の立場、自分の目線で、人と関わろうとしては上手くいきませんよね。そういった意味で、「論理こそ相手を思いやる気持ち」だと、考えているのです。

Q : なるほど。
A :

「小説は、自分が好きなように解釈し、好きなように読めばいい」という考えの人もいるかもしれませんが、私は今回、出口先生のおかげで、
「なんでこういう行動をするのかな?」とか「なぜ、こういう台詞を言うのだろう?」と、主観ではなく「何が書かれているのか」について考えながら読むことができました。
すると、「そうか、だからか!」という根拠が文中から見つかるのです。
今まで知らなかった、文学の深い面白さを知ることができたと思っています。ぜひ皆さんにもそういう読み方をお薦めしたいです。
自分の主観で読むより、論理的に読む方が何倍も面白いですよ。

Q : そこには、理解したからこその味わいがありそうですね。
A :

だから、漱石や芥川が身近に感じられるようになったのかもしれません。
これからも、論理的に作品に触れていきたいです。また新しい世界が開けていくような気がします。



Amazonレビューより

先生と女子高生が軽いタッチのかけあいで、名作文学の読みどころを解説する本だと思って購入したが、良い意味で予想を外された。
 言葉は明るく淡々としているが、女子高生の突っ込みが異常に鋭く、またそれに対する著者の返しもかなり深い。結果として、若い頃通りいっぺんに読んだ名作の、重くて暗い「本当の凄み」を教えられた気がして幾度も驚嘆のため息をつくことになった。
 前のレビューにもあるが、私も地獄変の解釈はお勧めである。続編にも期待。


「友達に借りて読んでみました。文学って難しいイメージしかなかったんですけど、こんなに面白かったなんて!!生徒との会話形式なんで、すんなり読めました。
他に「源氏物語」と「夏目漱石」もあるそうなんで買ってみたいと思います♪

著者は大学受験現代文の参考書にこう記している。「すべての答えは本文の中にある」と。本書は書かれた作品を通じ、作者の本音を探ろうとする推理小説も顔負けのとてつもなくスリリングな本である。ただ表層を読み、それで読んだ気になっていた作品の裏に隠された作家の真実が、書かれたもの(作品)を手掛かりに少しずつ露わになっていく。そのゾクゾクする快感は正に推理小説以上だ。例えば芥川の「地獄変」。著者のリードに従って読み解いていくと、今まで目に触れることのなかった本当の地獄が見えてくる。心の底から震え上がる。そして、本書を読んだあなたは、きっと今まで読んだ文学作品を再読したくなる。そして、そこにあまりにも人間的な作家の隠れた顔(本音)を見つけることになる。本書は本当の、そして禁断の読書へと誘う悪魔の書かもしれない。

 

「編集者のつぶやき」

コーエン企画 江渕真人

 17年前、大学受験に失敗し、浪人生活に突入した私は、ある一冊の参考書に衝撃を受けた。その参考書は『出口 現代文講義の実況中継』。うろ覚えで恐縮であるが、そこには「現代文は一つの結論の繰り返しだ!」という、極めてシンプルな読解法が紹介されていた。
 この一冊の参考書との出会いで、苦手だった現代文の成績は急上昇、晴れて大学にも合格することができた。まさに一冊の参考書が、私の人生を大きく変えた。

 あれから17年の歳月が過ぎ、今、編集者として出口先生の本を担当している。
 とても感慨深い。書名は『教科書では教えてくれない日本の名作』、日本の文豪作品を出口汪流に紹介・解説するものだ。収録されているのは、夏目漱石、芥川龍之介、太宰治など、誰もが教科書で一度は読んだことがある日本の文豪たちの作品。
 本書では、出口先生がそんな「日本の名作を10倍面白く読む方法」を紹介する。「こんな読み方があったのか!」と目からウロコが落ちること請け合いだ。17年前の私のように、本書が読者の皆様の人生のヒントになれば幸いに思う。ぜひ、ご一読下さい。



BOOKデータベースより

カリスマ予備校講師・出口汪が日本の6大文豪の名作に隠された知られざるメッセージを読み解き、「名作が10倍面白くなる読み方」を紹介する。
“先生”と女子高生“あいか”による「講義形式」で展開していく「楽しみながら読める!」スタイル。