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論理力を鍛える最強の武器

 論理力を身につけるには、どうすればよいのでしょう。
 論理学の本を読んで理解しても、あまり効果はありません。なぜなら、論理力は習熟することでしか身につかないからです。
 話す言葉、書く言葉において無意識的に文章の筋道が立ってくる、読むときも文章の論理を無意識に追っている、この状態になってはじめて論理に習熟したといえるのです。
 そのためには日々の積み重ねが必要となります。

 今回ご紹介するストックノート学習法とは、大学ノートの左ページに、読んだ文章の要約と論理的図式を書き、右ページにその文章を読んで考えたことをストックする、手軽に論理に習熟できる学習法です。
 もともと東大や慶応の小論文対策のために出口が考案したものですが、実際に授業で指導していくと、この学習法には論理的読解力、論理的要約力、そして深い論証能力の養成において目ざましい効果があることが判明したのです。
 ストックノート――日々のちょっとした努力で、たった100円の大学ノートが、知の全体像を一目で俯瞰できる舞台に変わります。
 今回は小論文対策に焦点をしぼり、ストックノートの具体的な作り方、活用術を詳しくご紹介いたします。

小論文単独の学習法など存在しない

 「ストックノートのおかげで、生徒の成績が驚くほど伸びました。ありがとうございました」
 出口の小論文対策講演会の質疑応答では、学校の先生から頻繁にこんな声が聞こえます。

 大学入試においてAO、推薦入試が占める割合は50%を超えました。小論文の必要性はそれだけ高まっているのです。
 しかし、その指導法に頭を悩める先生が実に多いと聞きます。

 

 表裏一体の関係。
 現代文と小論文の学習法は、実はほぼ同じです。現代文の力がつけばすぐに小論文は書けるようになります。
 しかし、一から小論文をやろうと思えばあまりにもロスが大きいのです。

 大学の小論文入試で試されるのは、独創性やセンスではありません。
 実際の入試担当者に聞いてみると、
 ・まともな日本語を書けない人を排除する
 ・大学生としてふさわしい、きちんとした文章が書けて、支離滅裂ではない一貫した考え方が出来ているかどうかを見る
 ・現代文の力を見ている
 といった意見が聞かれました。

小論文に必要な要素

 小論文に必要な要素はズバリ、以下の2つと言えるでしょう。
①要約力
 相手の主張を正確につかんでこそ、はじめてそれに対する意見が書けるようになります。
 たとえ、「要約せよ」という設問がなくても、設問文の要旨(主旨)を自分なりにつかまえていることが前提です。要旨をつかまえたかどうかで小論文の半分は決まる、すなわち小論文の半分は要約力だといえます。

②自分の意見
 「ああでもない、こうでもない」という論文で高い評価が得られることはありません。小論文で大切なのは、自分の立場を明確にすることです。筆者の意見がAならば、自分は同じAなのか、反対のBなのか、あるいはABを乗り越えるような第三のCなのか。
 ただし、A、B、Cいずれの意見をとるかはまったく自由です。小論文で評価されるのは、意見そのものではなく、同じ意見ではない人にきちんと納得してもらえるようにいかに論証するか、その論証過程に点数がついてくることをくれぐれも忘れないようにしてください。

小論文の採点ポイント

 上記の裏返しになりますが、小論文採点のポイントは以下の3つになります。
①要旨(主旨)をつかまえたかどうか。
②筆者の主張に対して自分の立場を明確にしているかどうか。
 先ほど述べたように、自分の意見自体はいかなるものであろうと自由であり、採点には無関係です。
 しかし、意見はその場で思いつくのではなく、普段から考え温めていることを自分の言葉で書くべきです。受け売りは採点のプロである採点官が見ればすぐにわかります。もし本当に自分のものになっていたら、自分の言葉で説明できるはずなのです。
③きちんと筋道を立てて説明しているか、

ストックとは?

 よく、熟練した芸人が「アドリブ」という即興芸を披露することがあります。しかし実際は、決して完全な即興ではなく、日ごろ溜め込んできた沢山の小ネタの中から、場の雰囲気に応じて最適なものを引き出してきたにすぎないのです。
 同様に、自分なりの小さな主張の引き出しをいくつも作っておくことが、実は小論文の対策として非常に効果的なのです。これを出口は「ストック」と呼びます。
 行き当たりばったりで書き始める受験生と、普段からストックを溜め込んでおいて、課題文に応じて、それをどのように出すかだけを考えればよい受験生と、どちらが有利かは言うまでもありません。

ストックノートを作るために

・要点をつかむ

 文章には、筆者の主張をわかりやすく説明するために、具体例や体験、引用など多くの言葉が使われます。つまり、数行の要点である筆者の主張(言いたいこと)を説明するために、さまざまな飾りの部分が付加されているのです。そのため、まずはその中の骨格となる要点と飾りの関係を見極め、骨格の部分だけを抽出しなければなりません。
 人間の体には必ず骨があります。文章で言うと、骨にあたるのは要点です。文章を論理的に読むというのは、衣装をはがし、肉体をそぎ落とし、その骨だけをつかむことなのです。

 

 ここで冒頭に述べた、現代文と小論文は表裏一体であるという所につながってきます。骨格と飾りを見極め、文の要点をつかむ方法は、現代文学習においてしか習得できないからです。詳しい勉強法については、論理.jp「論理エンジンを知る10のtips」を参照してください。

 

・要点同士の論理的関係をつかむ

 要点と要点との間には必ず論理的な関係があります。
 一般に用いられる論理は、「イコールの関係」「対立の関係」「因果関係」の3つです。
 ここも、現代文学習においてしか習得できないポイントです。簡単に説明すると、

①イコールの関係
 筆者の主張は概して一般的・普遍的です。そのため、より分かりやすくするために、筆者は具体例・体験談・別の文の引用・比喩などを用いて説明することがあります。
 筆者の主張A = A´具体例など

②対立関係
 筆者の主張を鮮明にしたいときに、あえてそれと反対のものを持ち出し比較することで、よりわかりやすくする説明方法です。
 筆者の主張A←→B対立するもの(比較するもの)

 または、対立する2つの主張を述べた後、弁証法で第3の解決策としての自分の主張をを提示する手法もあります。
 対立する主張1 B←→B´対立する主張2⇒弁証法A

③因果関係
 筆者の主張が複数ある場合、1つはその理由・原因であり、もう1つはその結論・結果であることが多いのです。(そうでない場合は同じ主張の繰り返し)
 筆者の主張1(理由・原因)→だから、筆者の主張2(結論・結果)
 例:私は一生懸命勉強した。だから、成績が上がった。

具体的なストックノートの作り方

では、以上をふまえて、ストックノートを作成してみましょう。

左ページ
・書名(必須)

・テーマ(あるとより良い)
 なるべく大雑把にまとめる。

・要約(必須)
要約したいと思った文章の中から、飾りと取り除いた要点を論理の順番に組み立て、かつ、なるべく筆者の言葉・表現を使って文章にまとめ上げていく。

・論理の図式(あるとより良い)
要点と要点との間には必ず論理的な関係があるので、それを「イコールの関係」なのか「対立の関係」なのか「因果関係」なのか頭の中で整理して、図式化する。

 

右ページ
・自分の考え
左のページを何度も読み返すうちに、話題に関連した自分の考えが思い浮かぶのでメモする。

実際に小論文を書くには

 これらの手法を駆使して、実際に小論文を書いていくことになるわけですが、今回は出口汪著『[出口式]論理力ノート』(PHP研究所)より、最初の意味段落を作るくだりを抜粋して紹介します。

 ① まずは、主張を明確にした正確な一文を書く。
 ② 次に、文と文の関係を意識して、連続した文を書く。
 ③ ①②の中には自分の主張が1つと、その論証がなければならない。
 なお、主張と論証の関係が、先ほど述べた3つの論理的な関係のうちの、いずれか1つに則っているように注意すること。(Aという主張を書くなら、その具体例は何か。あるいは、Aは何と対立関係なのかと意識する。)
 ④ あらかじめ次の文とは順接の関係になるのか、逆接の関係になるのかを意識して、
 「そして」「しかし」「つまり」「たとえば」「だから」などの接続語を見つける。
 ⑤ 次の一文を書く。
 このようにして、1つの意味段落が出来ていきます。

この後の流れについて

 第1段落だけでは主張が弱いと感じられたら、次の段落で「決定的な例」を持ち出してさらに補強するなどして、段落ごとの論理的関係を意識しつつ、最終結論に持って行くのです。
 段落ごとの論理的関係とは、例えば主張の第1段落を、「決定的な例」で補強する第2段落は、「イコールの関係」です。ちなみに論証の流れについて、はじめに全体の設計図を作ってから書き出すと見やすくなります。
 このような手順で、ものすごく簡単に小論文が書けるようになるのです。
 詳しくは、PHP研究所刊『[出口式]論理力ノート』をご参照ください。

 ご覧のように、課題文を読む際には要約、要点ごとの論理的関係の把握が重要であり、小論文を書く際にも論理的関係の意識や、ことばのつながり、接続詞の使い方が大切になるなど、小論文と現代文学習とはまさに表裏一体の関係であることがお分かりいただけたかと思います。
 そして、このストックノートこそ、小論文入試の本質への深い考察から生み出された、最強の学習法なのです。

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