HOME > 対談・真剣勝負 > 第10回 田原総一朗

タブーを越えて、時代の変動を見据えたい 思考停止という心地よさ    
           
既知に依存する官僚的論理から未来を作る論理力へ

官僚依存に陥った民主党
出口  田原さんは政治の世界を永らくご覧になってきたわけですが、そこで伺いたい。僕は少し前までは民主党を支持していました。一旦政権交代して、政官財の癒着を断ち切らないと、何もできないんじゃないか。そう思っての支持でした。ところが実際は……。
田原  あまりにもひどい。
出口  はい。結局、政権を担当したことがないので、いざとなれば官僚がいないと何もできない。気がつくともう官僚の言いなりになってしまった。
田原  そこが問題です。僕も政権交代したほうがいいと思ったので一票を入れた。そしたら菅さんが「脱官僚」と掲げたから、「それは違う。脱官僚じゃない」と苦言を呈した。
 どうしてかと言えば、航空会社のパイロットにあたるのが官僚ですよ。政治家はせいぜい役員です。パイロットがいなくて果たして飛行機が飛ぶかと。脱官僚なんて言ったら国は動かない。だから「せいぜい脱官僚依存にしなさいよ」と言ったんです。
 それで、どうなったかと言えば、脱官僚が脱官僚依存になった。そうこうするうちに全部官僚任せになっちゃった。
出口  やはり官僚を使いこなすことは難しいんですか?
田原  ええ。頭がなまじ良いから、「この政治家は果たしてどの程度の人間か」とすぐわかる。「この程度か」と思ったら、その程度につき合うんですよ。
出口  舐められちゃうわけですね。
官僚は「できない理由」を説明する天才
田原  小泉政権時代、経団連や同友会の幹部たちが僕に「ちょっと田原さん、小泉さんに言ってくれ」と連絡してきたことがあった。
 小泉政権の前半は日本経済が悪かったんですよ。「経済を良くする施策をしろ」と経済界の人間が言っても、彼は聞く耳持たない。あるいは聞こえても理解する頭がないのかもしれない。
 とにかく小泉さんに伝えてくれと頼まれた。それで小泉さんに「経団連や同友会の連中が、『小泉さんは言うこと聞いてくれない。もしかすると理解する能力がないんじゃないか』とバカ扱いしてるぞ」と言った。
 そしたら小泉さんは「そう言われてもしょうがないけど、俺は一切言うことを聞かないことにしている。自分の周りにいる官僚たちはみんな東大を出ている。自分は頭が良いと思ってる連中だ。俺は慶應出身でまともに勉強してない。そんな人間がなまじっか東大卒の言うことを聞いたら、俺が混乱するだけだ。だから一切聞かないんだ」と話した。
出口  だから、郵政民営化とか道路公団民営化を進められたわけですか。でも、やっぱり官僚的な優秀さは、前例に従って事を処理する能力であって、前例のない未知のことに対しては、うまく対処できないですよね。そこが限界。
田原 だから官僚は、「できない理由」を説明する天才なんですよ。「新しいことをやれ」と言われても、「できません。なぜならば」と長々と繰り出す。これを徹底的にやられたのが、ミスター年金と言われた長妻昭さん。厚生労働大臣だった頃、彼が何かやろうとしても、官僚はできない理由を言う。早い話がサボタージュですよね。
出口  あの頃の長妻さんはやつれていましたが、そういう背景があったんですね。だからこそ新しい時代は、前例に沿って行動するのではなく、正解のない問題に挑む力を養うための教育が必要だと思います。そういう意味で、日本の教育を変える取り組みを始めています。