HOME > 対談・真剣勝負 > 第10回 田原総一朗

タブーを越えて、時代の変動を見据えたい 思考停止という心地よさ    
           
既知に依存する官僚的論理から未来を作る論理力へ
論理力の強化が日本の展望を作る
田原  どういうことをやっているんですか?
出口  かいつまんで言うと、論理力の養成です。要するに自分で物事を考える力です。いまはネットや多チャンネルになったテレビから膨大な情報が入ってきますよね。
 そうなると情報をちゃんと識別し、判断する力がないと、いたずらに混乱するだけです。
 昔は数%のエリートが大学に行って、物事を決定すれば良かったけれど、これほど高度に情報化された民主主義社会では、情報をきちんと把握して、選択をする義務がそれぞれにあると思うんです。
 そのためには論理的に物事を考え、表現し、コミュニケーションする能力が不可欠で、英語を学ぶよりも重要だと思っています。
 そこで論理力を徹底して子供の頃から鍛えようと、「論理エンジン」というプログラムや教材をつくり、学校改革に努めています。
 いくら政治を変えても、旧態依然の教育を受けた人がまた物事を決定するポジションにつくようなら、日本はどうにもならないという気がするんですよね。
田原  「論理エンジン」の目指すところは、従来の教育とどこが違うんですか?
出口  これまでは情報を与えるだけの教育でした。中学校1年生の1学期の英語は、これだけの量をやりなさいといった具合に。
田原  つまり、単語をどれだけ覚えるかという話ですよね。
出口  そういうことですよね。ひたすら暗記するということは、模倣に徹するということです。そうではなく、自ら答えを見出していくうえで必要な日本語の運用能力を高めていく。
田原  運用能力を高めるとはどういうこと?
出口  今の子供たちは、論理的にではなく、何となく日本語を使うことが多いんです。「考えろ」と言っても、筋道立てて考えるとはどういうことか全く教えられていませんし、言葉の規則についても知りません。
 例えば、「Aである」と主張しますよね。これを他者に理解させようと思ったら、次にその証拠となる具体例を引っ張ってきて説明したりします。Aとこの具体例は、同じことを説明しているから「イコールの関係」です。
 あるいは逆に、対立する例を挙げることによって、Aを強調することもあります。これを「対立関係」と名付けましょう。
 引用された例は、Aと同じか、あるいは反対のことですが、いずれにしても自分の主張の根拠となり得るから引っ張ってきたわけです。
 今の国語教育は、そういったイコールや対立の関係を見出して文章を構成していくといったように、言葉を筋道立てて使っていく能力を養う内容にはなっていません。
 だから、そういう学習をしっかりやっていけば、論理を意識して読んだり考えたり、発言することができるようになります。
根拠なき言説に溢れる政治の世界
田原  なるほど。つまり論拠であり根拠ですね。今の政治を見ているとそれがない。
 例えば、野田首相が消費税を上げると言ってますが、自民党は反対しています。でも、反対の論拠がない。全くないんです。
 そもそも本当なら、自民党時代に消費税は上げとかなきゃいけなかったことなんです。
 小泉さんが郵政民営化問題で総選挙に大勝したとき、僕は「消費税を15%にしなさいよ」と言ったら「その通りだ。でも悪いけど、自分が総理大臣になったとき『増税しない』と言った。『だからこそ痛みを伴う構造改革を甘受して欲しい』と国民に言った。増税は次の政権にやらせよう」と答えた。でも次の政権もその次も短命に終わった。
 石原伸晃さんにも言ったんだけども、「民主党の消費税の値上げは感謝こそすれ、反対とは何ごとだ」と聞いても、その反論には論拠がない。
 谷垣さんに至っては「民主党のマニフェストに反するから反対だ」という始末。「あんたたちは民主党を攻撃するとき、『マニフェストが破綻している』と言っている。だったら破綻しているマニフェストに反するなんて、理屈にならないじゃないか」と言ったら黙っちゃった。
出口  その矛盾に気づかないんですね。
田原  とにかく論拠なしの論争が平気で行われているんですよ。
出口  政治家こそ論理的な言葉の使い方を習熟して欲しい。論拠もなければ因果関係もない。めちゃくちゃな話が多いですから。
 自分の意見を述べるには、客観的な証拠が必要です。ところが意見と論拠の区別ができていない人が実に多い。
 自分の意見を客観的な事実とごちゃ混ぜにして話をしてしまっている場面をよく見ます。個人的な意見と客観的な根拠を区別できないから、すべてが事実であるかのように話してしまう。
 政治家に批判的な新聞も大きなことは言えません。消費税に賛成か反対かという、すごく単純な議論にしてしまって、考察になっていませんから。
田原  そうですよ。だから出口さんの論理力を伸ばす教育をどんどんやってください。大阪にお住まいだったら、それは大阪の橋下市長にも提言した方がいいんじゃないんですか?
出口  そうですね。チャンスがあればやりたいですけども。
田原 チャンスなんか作ればいいじゃない。あなたの曾祖父なんて、チャンスをどんどん作ってやっていったじゃない!だから、これからの社会のために頑張ってくださいね。
出口  楽しいお話をありがとうございました。今日は、田原さんから沢山勇気をいただきました。