HOME > 対談・真剣勝負 > 第12回 大迫弘和

従来型の教育では得られない強み 社会全体を巻き込む教育改革 学びの本質へ
問われる「論理力」
出口  IBのプログラムでは、分析的かつ論理的な文章の読み方・書き方をしています。つまり、「文章を論理的に読み、論理的に考え、論理的に表現していく力」がIBでは重要視されていますよね。
大迫  Extended Essayという必修の授業では、自分がやった教科学習からテーマを選んで、日本語だと8,000字、英語だと4,000wordsのエッセイを全員必ず書きます。TOKという授業でもエッセイが必ずあるのですが、それらを通じて言えるのは、評価基準は内容ではなく、「主張を伝えるために、いかにうまく構成されているか、説得力のある例証があるか、具体的なものが加えられているか」という点であることです。内容には、全く触れていない。
 ですから極端に言うと、ものすごく過激なことを書いても論理構成がしっかりしていたら、いわゆるA+が取れるんですよ。日本の場合は、「内容が悪い」と言われてしまいますよね。
 IBでは「論理的・批判的にものを考えて書く」ということを徹底します。なぜなら、これがないと学びそのものがそもそも成立しないからです。
出口  スキルとして大切なのは、「自分はこう考えている、こういう思想を持っている」ということを、不特定多数に対して、いかに論理的に説明できるかという論理性ですよね。
大迫  主観的な「思想チェック」ではなくてね。内容よりも、他者に対してどういう形で論理的に説明していくかのトレーニングをする、そして評価をちゃんとして、足りないとこは「足りない」と教える。これがIBの基本的な指導方法なのです。
 さらにIBは国籍や文化において多様性のある生徒たちが取り組むので、「作品に一律の見方はない、色々な考えが出て当たり前」という考え方があるのです。
 ところが日本の国語教育は、作者の思想について良い・悪いという価値観で判断していて、IBとは根本が違うんですね。この二つは融合できると思いますか?
出口  僕自身は、実は同じだと思っています。
 日本の現代文あるいは小論文も、本人の思想や価値観は関係なく、あくまで論理をきちんと理解して、その文章の内容を正確に理解したかどうかが重要なのです。そのためにも筆者の意識で文章を読み、自分の意見は他者に伝わるよう筋道立てて論証していかなきゃならない。
 日本の国語教育もそうあるはずだったけれど、教える側が間違ってしまったのです。ですから本来の国語教育は、バカロレアと矛盾しないと僕は思っています。
あらゆるきっかけとしての国際バカロレア
出口  今度、水王舎からバカロレアの本格的な本が出るということで、ぜひその内容を紹介していただけますでしょうか。
大迫  2018年までにIB認定校を200校に増やすという、国が掲げた大きな目標に役立つ本を目指して書かせていただきました。
 IBに興味がある学校はかなりありますが、その中の何割かは、「やってみたいけど、できるかな」と躊躇してしまっている。このように、いま迷っている学校が「これだったらいけるな」と思えるよう、「みんなで力を合わせて、日本の教育の大きな流れに参加する形でやりましょう」という気持ちが出てくるようにと願って書いた本です。IBの普及に少しでも役立てればと思います。
出口  文科省が正式にIBを日本語で勉強できるようにして、「200校」と目標まで具体的に出している割に、多くの方は国際バカロレアを知らなかったり、名前は聞いてもよくわかっていなかったりしますよね。
 バカロレアの本質を、最新情報まで踏まえてここまで丁寧に書かれた本は初めてなのではないでしょうか。今回の本は国際バカロレアにとって唯一の手引書になると思います。
 同時に、父兄の方はぜひ最低限の知識として国際バカロレアについて知っておいてほしいと思うのです。そのことで子どもたちの将来の選択肢も広がるので、子どもの教育を見直す一つのきっかけになります。教育に関心のある方や関係者も、これから国際バカロレアは「知らなかった」では済まなくなると思います。
 ぜひ、国際バカロレアを知ることにより、「自分たちの関わっている教育は一体どうなっているのか」ということを考え直すきっかけにしていただければと思います。
大迫  子育て観や教育観を、今までとちょっと違う形で持っていただくきっかけになれば嬉しいです。
出口  ただ単に国際バカロレアがどうというより、日本の教育がどうあるべきなのか、どこが問題なのか考えることが、国際バカロレアを知ることの大きな意味だと思います。今後の入試改革も全部連動しています。これから制度が変わって、学力試験がなくなる可能性が高いとなると、大学入試という教育改革に立ちはだかっていた最大の壁が一気に崩れていく訳ですから。
大迫  入試制度も動き始めていますからね。
出口  この流れはもう方向転換できないんじゃないかと僕は考えています。実は文科省は、ゆとり教育のときからこの流れだったんですよね。
大迫  本当にそうですね。
出口  ところが政権が代わって、マスコミから「学力低下」と叩かれてしまったので、少し表面の包み紙を変えてみたという感じです。だから根本的なところはそんなに変わっていない。文科省は国際バカロレア導入を教育改革のチャンスだと捉えたと思うのです。
大迫  プロジェクトの準備段階から文科省に協力して2年くらい経つのですが、その間、ゆとり教育のときにあったような逆風は、1回も感じたことがありません。
 逆に、追い風が吹いていると感じます。
出口  ぜひみんなで協力して日本の教育を良い方に変えていけたらと思っています。
 今日はどうもありがとうございました。