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1分間勉強考
ふたりの出会い~『1分間勉強法』誕生秘話 『1分間勉強法』の成功を論理的に考える 第三部 『1分間勉強法』の今後
“『1分間勉強法』の今後
“『1分間勉強法』は他の強化にも応用できる
出口  今後の「1分間シリーズ」の傾向ですが、このやり方は、すべての記憶に対して役に立つと思うんですよ。例えば歴史にしても、山川出版の教科書が今、一般書の中で売れているという現象があって、やはり我々社会人が「やっぱり歴史は面白い」「いろんな歴史を知りたい」ってことで、結構ブームですよね。僕も、歴史が好きでいろんな本を読みますけど、「面白かった」っていう漠然とモヤモヤしたイメージや印象はあっても「じゃあ何が?」と言ったら、全部忘れて記憶できていないんですよ。だから、ただ面白いからといって何冊も読んだところで、何も頭に残っていない中で、まずは事件名とか人物名をピンポイントに記憶していこうと。すると、そのピンポイントに記憶しているものがまずあって、その周辺のいろんなものが頭の中によみがえってきて、ピンポイントに記憶したことと記憶したことの因果関係が、次に繋がってくるんですよ。これが普通の人じゃないか、と思うんですね。
石井  はい。
出口  たぶん学者は、きちんと記憶というか、大切なものを記憶しているから、いろいろなことがわかってくるわけで、一般の人が実際に教養として勉強する時でも、やはりどこか意識して記憶しないと、学習したことはほとんど身に付かないと思うんですよ。そういう意味では、『1分間日本史』『1分間世界史』は、受験生だけじゃなくて、一般の人にも読んでほしいと思うんですよ。
石井  そうですね。やはり一般の方でも、このやり方ならもう1回覚え直すこともできますし、「人名は赤なので、赤が頭の中にどんどん入ってきた」というふうになるでしょうね。
出口  一般の人は皆、日本史・世界史をかつて学校で学んでいるのに、ほうっておくと全部消えてしまうのは、もったいないですよ。そこで、『1分間』でもう1回きちんと覚え直すことによって、自身の生涯のバックボーンにもなると思います。しかも1分間だったら、手軽に短時間で記憶できますし、ゼロから覚えるのは難しくても、ある程度やってきて忘れているものを1分間で覚え直すのは、ものすごく効率が良いと思いますよ。
石井  そうですね。
出口  そういう意味では、ぜひ一般の人も1回は挑戦してほしいと思いますね。
石井  はい、ぜひやっていただけたらと思います。
出口  やはり記憶というのは、あらゆるジャンル・分野・あるいは科目に有効ですので、良いものがあれば利用したほうが時間も節約できますよね。
  できれば石井さんには、いろんなジャンルにまたがって、このシリーズをさらに完璧なものにしていって欲しいと思います。
石井  ええ。ぜひ、水王舎で出していただければ。
出口  とりあえず直近で、あくまで石井さんの頭の中で、『1分間』のこんなものをやりたいというものでは、どんなものがあるでしょうか?
石井  そうですね。まあ、いくつかあるんですけど……。まず記憶についてですが、記憶には2種類あると思っていて、ひとつは、さきほど話してきたような単純反復記憶です。これは例えば「お母さん」という単語は、実際にお母さんが出てくるからみんな覚えるんですよね。「dog」という単語を見て、「ドクドクするのはdog」とか連想法で覚えるのではなく、見て一瞬で意味がわかることが必要だという英単語の場合は、単純反復記憶が一番です。たぶん漢字も入るでしょうね。
  それから、もうひとつはイメージ記憶です。イメージ記憶は、覚えるまでに時間がかかりますが、1回覚えたら半年や1年は忘れません。イメージ記憶がどうしても必要になってくるのは、古文単語だと思います。というのも、例えば「ゆかし」が出てきた場合、今の日本人だと「愉快な感じかな?」と思ってしまって、日本語から日本語に変換するのに1回イメージを介さないと、別のものにならないからです。例えば「ことごとし」っていう単語は、僕は「コートごと仕送り大変だ」って覚えたんですけど、「テニスをやっている男の子に両親がテニスコートを仕送りでプレゼントした」みたいなイメージで覚えました。そうなると、「ことごとし」が出てきた瞬間に「テニスコートで大変だ」が思い浮かんで「大変だ」に丸をつける、となるわけです。1回連想記憶をかませて、その連想を1秒で想起させるやり方ですね。
出口  それはすごく面白い。というのは、石井さんがおっしゃったように、英単語は基本的に別の国の言葉だから、知らないものはまったく知らないし、学校で習っているものは、何度も出ているうちにだんだん覚えていきますよね。これに対して古文単語のやっかいなのは、そもそも日本語なので、初めて見る言葉でも……。
石井  そうです。違和感を持たないんですよ。
出口  自分の中で勝手なイメージが既にできてしまって、それに引きずられて覚えられないとか、間違った語彙がある場合は、イメージを変えることが必要ですね。
石井  はい。やはり古語と現代語のズレが問題にされるわけですから、そのズレをイメージで変えていくやり方ですね。
出口  うん、これはすごく面白い。
石井  他にも、日本史と世界史の年号、これもイメージ記憶ですね。例えば、1543年は「鉄砲伝来、一発ごつん、尻から三発」と覚えました。「1543年」と聞かれた瞬間に「鉄砲伝来」と言えるのは大変ですけど、「1543年」という年号は、問題になりやすくて無機質な情報なので、そこに命を吹き込んで長期記憶に落とし込まなくてはいけないですし、1回覚えて1年後の入試にも使えるようにするためには、イメージ記憶しかないんですよね。
出口  なるほど。歴史案に関してはぜひ温めてほしいところですが、年号そのものを知っているかよりも、やはり全体を俯瞰することが大事だと思うんですよ。「(西暦)1000年はどんな時代だったのか?」「1100年は?」というように。あと、例えば「日本がこの時に世界はどうだったのか?」というのは、年号でしっかり覚えておかないと理解できないと思うので、時代の節目の事件を決めて、「この時代はこれを理解しておくと、全体の中でどんな時代かがわかる」とか「その時の日本と世界との関係がわかる」とか。そういうものをピックアップして、覚えてもらうとすごく良いと思いますよ。
石井   『1分間世界史<論述編>』で、テーマ史と、通史と、横の時代を組み合わせたらどうでしょう? 例えば「15世紀はどんな時代でしたか?」などという設定をして、「キーワードを全部入れて、年号も入れたら合格ですよ」っていうものを作って、それを一回理解して覚えた後に「見開き1秒で見ていく」という訓練をすると、論述問題が全部1秒でわかるっていう……。
出口  受験生にはすごく役に立つと思いますね。
石井  「歴史は流れではなく点で覚えよ」とありましたけど、今度は「点を流れに変えるための『1分間日本史』『1分間世界史』」というのも作りたいですね。
出口  ああ、それはさっき僕の言った「節目をちゃんと押さえていないと、いくら理解しても何も残らない」という考えに、まさにそのやり方はピッタリですね。
石井  そうです。線引きを、テーマ史と、通史と、横の年代別に分けることによって、さらに立体的にというか、二次元が三次元になるんですよ。そうい『1分間日本史』『1分間世界史』の組み合わさったやり方っていうのもありますね。
出口  まず線を点にして、答えは点から線に、あるいは空間にしていくみたいな……面白い記憶の仕方ですね。それはやっぱり、背景に論理があるから線が点になるわけだし、この点を線や三次元に持っていくために論理があるわけで、そういう意味では、記憶と論理が本当にうまくマッチしているやり方だと思いますね。
石井  そうですね、はい。あと、地理・倫理・政経といった暗記ものも、「1分間シリーズ」の一番得意な所です。
出口  それは、今のやり方ですね?
石井  そうです。例えば地理だったら、国の名前が赤になるかもしれないですし、作物の名前が黄色にとか、4色を変えれば良いだけなので、倫理や政経も簡単ですね。あと他には、数学が一番適していると思います。今度は「論理を1秒で思い出す訓練」になるわけです。
出口  なるほど。
石井  そもそも、なぜ問題が作られるかというと、ポイントを理解しているかどうか確かめるために作られるわけですよ。ということは、「ひとつの問題にポイントは多くて2つしか無い」と思っているので、問題が出たときに「そのポイント何か?」をイメージさせて、さらに答えの導き方を示して、それを1問1秒で見ることができる数学の参考書があったら、買いませんか?
出口  うん、それは良いですね。
石井  僕は受験時代、ひとつの単元に200くらいの問題と答えの解法について、1秒で見て思い出す訓練法を自分で自作していたんです。で、試験の前日に1000問から2000問やっていたので、3か月で数学の偏差値が30から70に上がったんですよ。でも、そういう「1秒で覚える数学の教科書」って無かったですよね。これがもし、書籍としてできるようになれば、中1編、中2編、受験編とか、全単元ができる感じはします。
出口  僕は専門は近代文学ですが、受験時代は国立の医学部を目指して数学もやっていて、やっぱり同じようなことを考えていました。
 例えば問題文を見ると、数学ができない人は何も考えず闇雲に計算を始めてしまって、その結果、計算間違いしても気がつかない。でも、論理力のある人は先が予想できるから、問題文を見たら何がポイントか、あるいは方法がAとBとあって、AはやっかいでBの方が近道とか、計算間違いに気がつくとか……。やっぱりこういう力がないと、いくらやってもダメじゃないかと思うんですよ。
 そういう時に、問題文だけを見て、1秒で一体何を見落としているか、どんな公式を使おうとしているかがパッとわかれば、全然違ってくると思うんですよね。
石井  はい、そうですね。数学って、みなさん苦手意識を持っていると思うんですけど、1秒でできたら数学ほど楽なものは無いんですよ。
出口  なるほど。見た瞬間に予測できるし、余裕ができますね。
石井  はい、数学は論理的に思い出しやすいし、復習にも一番適しているので、「1回暗記して理解してしまえばイメージは1秒で」という数学の本が作れたら良いと思いますよ。