出口先生よりメッセージ
本書は「出口の小学国語」の集大成でもあり、それと同時に進化版でもあります。
21世紀型学力の追求は今や世界的な流れとなりました。その中核を担うのが、クリティカル・シンキングと呼ばれる、誰かの言葉を鵜呑みにせず、自らの頭で物事を深く分析して多角的に捉え、最適の解決策を導きだす生きた思考力を身につけさせる試みです。
それに伴い、文科省は既存の「国語」の改革に着手し始めました。大学入試もその流れに沿って、今までの暗記・読解中心の試験から、自らの頭で主体的に考え、表現する能力を問われる試験になるのです。
こうした新しい教育に対応していくには、小学生の頃から学習の仕方を大きく変えなければなりません。これまでのように、受け身で詰め込み教育を受けていると、頑張れば頑張るほど世の中でも試験でも通用しない人間になる悲劇さえ起こりうるのです。
クリティカル・シンキングを柱とする文科省の方向性には大いに賛成ですが、欧米でこれが定着したのは、すでに子どもの頃から彼らが論理的な訓練を十分受けているからです。
それに対して、日本は「察する文化」ですので、論理的に言語を扱う訓練がないまま、いきなりクリティカルな思考力を養成することは不可能です。論理的に読み、論理的に考え、論理的に表現する、そういった技術を子どもの頃から鍛えてこそ、初めてその延長線上のクリティカルな思考が可能となるのです。
文科省は「論理的に話したり書いたりする国語」と「古文や漢文を鑑賞する言語文化」を必須科目に、選択科目として「論理的文章を読解する論理国語」「小説や詩を鑑賞する文学国語」「国語表現」(仮題)に解体・再編することを検討しています。
これはクリティカル・シンキングの基礎に論理力が必要であることの一つの証だと言えましょう。
本書は既存の「国語」とは一線を画するものです。
幼児・小学生の子どもたちが将来新しい入学試験に対応し、社会に出ても活躍できる、生きるための学力を養成するための具体的な方法論を備えた、画期的な国語シリーズです。
子どもは自分の教育を自分で選択することはできません。子どもの教育を決定するのは親の責任です。しかし、その結果を負うのは子ども自身なのです。
ぜひ本書によって、子どもたちを新しい方向へと導いてください。
出 口 汪
小1レベル目次
- はじめに 論理とはなにか
- ステップ1 具体と抽象
- ステップ2 対立関係
- ステップ3 形容詞
- ステップ4 5W1H
- ステップ5 文の要点
- ステップ6 文の構造を理解する
- ステップ7 作文の基本
- ステップ8 接続語記号問題
- ステップ9 心情読解
- ステップ10 クリティカル・シンキングの基礎
- 特別掲載 実践! 論理トーク
本書の紹介
①文の要点を色と形でパターン認識。
一文の“言いたいこと”をどうとらえるか。出口式では「主語・述語・目的語をつかまえることが、すなわちその文の要点となる」という指導をしています(→要論理.jpリンク)。しかし、主語・述語の概念把握には文法習得が必要なので、いままで小学低学年に習得させることは難しいと考えられていました。
本書では主語・述語・目的語を文法からではなく、色と形を使ってマークさせることからはじめます。つまり、主語・述語の形や位置に慣れさせるステップを挟むことで、理論を超えて体感的に主語・述語が理解できるようになるのです。
②メディアも注目、論理トーク
子どもに論理的思考力を身につけさせるために試行錯誤を重ねた結果、ついに出口は親子間の会話において「あること」に気を付けるだけで、子どもの論理力が飛躍的に向上することを発見しました。その名も「論理トーク」。カギは因果関係にあります。大新聞も注目している本メソッド、ぜひ体感してみてください。
③接続語は記号だけでマスターせよ
接続語の空所補充問題。多くの子どもは語感を頼りに答えを選び、大学受験の頃になっても合ったり間違ったりを繰り返してしまいます。
接続語は前の文と後の文の論理的関係を示す言葉です。だからこそ、語感でとらえるのではなく、その関係性からとらえない限り、決して正解にはたどり着けません。本書は接続語そのものを覚える前に、まず前の文と後の文の関係を記号でとらえさせる方法論を提唱しています。これで接続語問題は百発百中間違いありません。
④作文革命“ロジカルライティング”
「作文って、いったい何を書けばいいの?」
多くの児童を悩ませる読書感想文や作文。従来の国語では、先生によって教え方はまちまち。感性を活かした表現をお題目にはするものの、書く作法が確立されていませんでした。
しかし、一言目に何を書いてよいのかさえ分からない子どもが量産されている現状は、雲をつかむような理想論のおしつけに過ぎなかったと言えるのかもしれません。
本書では、自分の意見を一定の型を踏襲して表現する練習をすることで、作文・論文の書き方が簡単に習得できる方法を提示しています。実は欧米ではエッセイ・ライティングという手法で、論理の文章は一定の型から習得させるのが普通なのです。小論文等にもそのまま応用できる作文作法をぜひ早い学年で習得してください。
こんな方におススメです
- 幼児や小学校低学年のお子様をもつ方
- 国語は何を勉強してよいか分からないという方
- 今から大学入試を意識した力をつけたいという方
- 論理的な力をつけたい方
- 社会現象の謎を解いてみたい方
- 頭を揺さぶってみたいという方
「編集者のつぶやき」
国語は、大の苦手。勉強方法はといえば、とりあえず問題集をやるだけ。でも、具体的なスキルを教えてくれる先生もいなかったし、参考書もなかった。20年近く前にテクニックだけで乗り切ったセンター国語が、昨日のように思い出されます。こんな本を小さいときからやっていれば、今の自分はもっと輝かしいものとなっていたに違いないなあ。そう思わずにはいられません。
そういえば、文科省がやたら「論理的思考力」って言葉を使っているようです。国語という教科は、新しく名前を変えて生まれ変わるとも言われています。言葉は、言語技術。すべての土台となるものだということを、この歳になって気づかされています。
これからの日本を作っていく全ての人たちに、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。きっと新たな人生の扉を開けてくれるものとなるでしょう。
安達暁宏