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超訳 鷗外の知恵
超訳 鷗外の知恵



ディスカヴァー・トゥエンティワン
1,700円(+消費税)

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鷗外は軍人、文学者として最高の地位を得た。
だが、鷗外は決して順風満帆な人生を送ったのではなかった。
体制派であると同時に、反体制的な発言を繰り返した。
恋愛と結婚、そして、離婚を経験した。
個人と家、個人と国家との問題に苦しみ、嫁姑問題でも煩悶した。

鷗外は何度も何度も挫折し、苦汁をなめた。
しかし、そのたびに強靱な意志力でそれを乗り越えていったのだ。

本書は鷗外が小倉左遷前後に連載した、「知恵袋」「心頭語」、 そして、東京に転勤し、復権した翌年に連載した「慧語」、この三冊の箴言集の超訳である。
「知恵袋」「心頭語」の原典は、
1788年、フランス革命勃発の前年に刊行されたクニッゲの「交際法」である。
この書物は日本ではあまり知られていないが、ドイツではどの家庭でも一冊は備えていると言われているものである。
その内容は実践的であり、様々なタイプの人間との交際の仕方や処世術などが事細かに、 しかも具体的に述べられている。
鷗外は「交際法」を翻訳するに当たって、日本人に必要な箇所を選択し、 時には自分の体験を交えたり、原典にはない内容を書き加えるなどして、思い切った修正・加筆・削除を行っている。まさに「超訳」のはしりである。
「慧語」の原典は、スペインのイエズス会士バルタザール・グラシアンの著作集から、 彼の友人ラスタノザが一六五五年、彼の死後、三百箇条の箴言を抽出し、 編集したものを、さらにショーペンハウエルがドイツ語訳したものである。
その中から、鷗外が五十四箇条を抽出し、これも超訳している。

以上のようにヨーロッパで古くから読まれ続け、 しかも、鷗外が日本人に必要なものとして、抽出し翻訳した三冊の箴言集から、 さらに現代の日本人に送りたいものを出口が厳選し、超訳したのが本書なのだ。


〈本書の一部〉

5 まず自分を信じよ

自分が自分を信じること。
それがあって初めて、人が自分を信じてくれる。
いったん自信が崩れて、表情にそれが表れてしまったなら、 人はたちまち寄りつかなくなる。 それはカインの額に刻印された、罪のしるしだ。

10 才能とは運を操る術である

幸運は気まぐれである。
いつあなたに訪れるのか、誰にも分からない。
才能とは、運を操る術のことである。
運が巡っていると思えば、思い切って前へ突き進む。
まだ巡っていないと思えば、ただちに立ち止まる。
そして、運が巡ってくるまで、じっと時を待つのだ。

32 希望する知らせは容易に信じるな。
悲しい知らせは心に鞭打って信じよ

望ましいと思う出来事に遭遇したときは、 それを安易に信じたがる自分に手綱をかけて引きしめなさい。
悲しむべき知らせに接したときは、自分の心に鞭を打って、 それを信じるように自分を励ましなさい。



「編集者のつぶやき」

ディスカヴァー・トゥエンティワン 取締役出版部長 藤田浩芳

 森鷗外がこのような箴言集を残していたなんて……というのが、出口先生から初めてお話を伺った際の驚きでした。
 世に知られていない鷗外の箴言集を現代文のカリスマ講師として著名な出口先生が超訳される、というだけで大きな話題を呼びそうで、原稿の完成を楽しみにしていましたが、出口先生にとっては非常に生みの苦しみがあった本だったようにお見受けしました。
 長年愛読されているだけに、数多い箴言の中からこれだけの項目を厳選するのが、まずご苦労されたことと思います。そしてさらに「原文のままでは現代人にはわかりにくいが、どこまで『超訳』してよいものか?」と出口先生がさまざま試行錯誤され苦心されたことが、完成までのいくつかの段階で原稿を読ませていただいた折に伝わってきました。
 そうした苦しみが実り、まさに渾身の作品と言うべき本になっています。
 彼の小説には表れていない、鷗外の人間らしい悩みや苦しみ、それを乗り越えた強さが感じとれる箴言。そしてその箴言を選び超訳した出口先生ご自身の内面も滲み出ているような箴言の数々を、ぜひ味読していただきたいと思います。